間違いのメール交換

「秀ちゃーーん!!!」
寒い、朝の日だった。
俺と、俺の親友の秀平が、学校の門を今にもくぐろうとしていたとき。
俺たちの後ろから、やけに明るい声がした。
「おはよっ、秀ちゃん!・・・比呂君も。」
明るい声の主の少女は、俺たちに明るく挨拶をする。
「おー、おはよ、亜実。」
その挨拶に秀が答え。
「・・・お、おはよっっ・・・!!」
俺はというと・・・突然話しかけられた驚きで、声が裏返ってしまった。
じゃぁね、と小さく手を振って、亜実は小走りで俺たちを抜いていく。
俺は、その姿をぼーっと眺めていた。
「おーい、比呂斗?」
「・・・・・。」
「おい!比呂!!!!」
「うわっ!?な、なんだよ、秀・・・。」
ぼーっとしてたせいで、秀の声に全然気付かなかった。
「・・・比呂って、亜実のこと好きなのか??」
突然の秀の言葉に、俺は
「なっ・・・!?」
と声にならない声をあげ、耳の先まで顔を真っ赤に染めてしまった。
そんな俺の反応に何を思ったか、秀はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「ふーん、やっぱり。お前ってわかりやすいな〜。」
「う、うるさいぃ・・・・!!!」
今日の気温はかなり低いはずなのに、俺は顔が暑かった。
「・・・なぁ、比呂。比呂ってこの間携帯買ったって言ってたよな?今、持ってる??」
「え、携帯?持ってるけど・・・??」
「じゃぁ、今日メール送る。アドレス教えて。」
「メールって・・・秀と!?あの面倒くさがりやな秀が!??」
「お前失礼だぞ、それ。今日の授業、つまんないのばっかなんだよ。」
「ふ〜ん。まぁ、いいけど・・・。」
授業中にメールをする、ということには特に気を留めず、俺は了承した。
昇降口についたところで、秀が紙切れに携帯のアドレスを書いてくれて、俺も紙切れに自分の携帯のアドレスを書いて秀に手渡す。
そして、俺たちは各自の教室に向かった。


ホームルームが終わり、間もなく1時間目が始まった。
俺はポケットから携帯と、秀にもらった紙切れを取り出す。
メール作成を選択し、宛先のところに紙切れにかかれたアドレスを打ち込む・・・のだが。
なにしろ、俺はちょっと前に携帯を持ったばかりだったので、アドレスを打ち込むのに悪戦苦闘していた。
・・”@”・・・”m”・・ちがう、ここは”d”だ。・・・あぁもう!!
その時、俺の携帯のメール作成画面がメール受信中の画面に変わり、数秒後に手に振動が伝わってきた。
誰からだろう、と送り主をみると、それは今自分が悪戦苦闘しながらうちこんでいたアドレスからだった。
無造作にメールを開く。
『今、何の授業?こっちは社会。眠い・・・。』
慣れない手つきで、返事を打ち込む。
『今は国語。俺も眠い・・・。』
送信ボタンを押して、返事を待つ。
それから、そんな他愛もない会話が続いた後、さっきまで頻繁に来ていたメールが、ぷっつりと来なくなった。
1時間目の授業が終わり、次の授業の為に移動をしている最中、やっと返事が来た。メールを開く。
『あの、ごめんなさい。キミとは付き合えない・・・好きな人、いるんだ。・・・ごめんね。』
・・・はぁ!?
とんでもないメールの内容に、思わずその場に立ち止まり、携帯の画面を覗き込む。
俺、秀に告白なんかした覚えないんだけど??
そんな事を考えていた矢先、メールが届いた。
『ごめんっ!メールの宛先間違えた!!さっきの忘れて〜!!!』
・・・びっくりした、間違いか。
そっとため息をつき、メールを返す。
『・・・誰かに告白でもされたの??』
『うん・・まぁ、そうなんだけど・・・。』
『断っちゃうんだ??そういえば、好きな人って、誰??』
秀は意外ともてる。・・・でも、秀の好きな人なんて聞いたこと無いぞ??
そう考えながらメールを送信し、少しの間があって返事が返ってきた。
『・・・秀ちゃんだから教えるけど・・・絶対に内緒だよ??私の好きな人は・・・・』

ドンッ!

続きを見ようと画面を下にスクロールさせようとした所に、誰かがぶつかってきた。
続いて『いたた・・・。』という可愛らしい声。
顔を上げると、そこには亜実の姿があった。
「はわわ、ごめんね、比呂君!大丈夫??」
慌てて駆け寄ってくる亜実。
「あ・・・うん、大丈夫・・・」
ぎこちなくそう答えて、俺はぶつかった際に落としてしまった携帯を探す為に床を見渡す。
床には、2つの携帯が落ちていた。
亜実が手近にあった俺の携帯を拾い上げ、はい、と俺に差し出してきた。
俺も亜実の物と思われる携帯を拾い上げ、その携帯を亜実に渡そうとしたとき、その携帯の画面が比呂の目に飛び込んできた。


――送信完了しました――
絶対に内緒だよ??私の好きな人は・・・・
・・・比呂君。


「え・・・?これ・・・・」
これは、さっき俺の携帯に届いたメール・・・??
てことは、このアドレスは・・・・・
「これって・・・秀ちゃんに送ったメール・・・??」
亜実も、俺の携帯の画面を見たらしい。
しばらく携帯の画面と俺を交互に見つめる。
そして、亜実の顔が、りんごのように赤く染まった。
俺の顔も熱くなってくる。
「・・・秀!!」
「・・・秀ちゃん!?」
俺と亜実はほぼ同時に、秀の教室に向かって駆け出した。
秀の教室の前まで来たとき、タイミングよく秀が教室から出てくる。
「・・・お?比呂、亜実?そんなに急いでどうしたんだ??」
のんきにこんなことを言ってくる。
「どうしたんだ?じゃないっ!!!」
「秀ちゃん、自分のアドレスじゃなくて比呂君の教えたでしょっ!??」
秀はあ、と冷や汗をかきながら『あはは〜。悪い、間違えちゃったよ〜』なんて渇いた笑いをもらしている。
「・・・嘘付け!!」
「秀ちゃぁ〜〜〜ん!!???」

キーンコーンカーンコーン・・・・

廊下に2時間目の始まりを告げるチャイムが鳴り響く。
「あ、授業だっ!」
そう言って、秀はそそくさと自分の教室の中に逃げてしまった。
「やばっ!俺、移動教室!!!」
「私も教室戻らないと!!」
そう叫び、お互い違う方向に駆け出した。

走りながら、俺はさっきのメールの返信画面を出し、本文を打ち込む。

『なんか俺だけ知ってるのも悪いし、俺の好きな人も教えるよ。俺の好きな人は――』


***あとがき***
亜実が比呂斗に間違えて送った『ごめん、キミとは付き合えない・・・』というメールは、私の友達の実話だったりします。
いきなり男子から『ごめん、俺、好きな人いるから・・・』というメールが来たそうです。間違いで。(笑)
アオイさま、リクエストどうもでした♪

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