「菜月って絶対鈴木に好かれてるよな〜。」
とある中学校の、一応は授業中。
斜め前に座っているその人に、私はそう言われた。
「春樹・・・いきなり何言い出すの??」
訳がわからず、私が問いただすと、
「だってさぁ・・・鈴木って菜月に何かとちょっかい出してない??」
鈴木っていうのは、私の隣の席の男子。
今はなんかあっちの方で他の男子とふざけてるみたいで、この場所にはいない。
鈴木・・・ねぇ。ちょっかい・・・ていうより、あれは暇を持て余しているようにしか見えないんだけど。
「だからって、なんでそうなるのよ・・・。」
「え、みんなそう思ってるよ??なぁ、伊藤??」
春樹は、自分の隣の席の男子に話を振り、
「あぁ、俺もそう思う。」
な、何ー!?こいつまで!??
こういう場合って、どういう反応をしたらいいの??
・・・好きな人に、"お前はあいつに好かれてる"って言われたって。
伝えたい想い
「はぁ・・・。」
授業終了後、私は盛大なため息をついた。
「どうしたんだよ、菜月。でっかいため息なんてついて。」
「・・・鈴木。」
お前のせいだよ、私のため息の原因は!!
隣の席に座っている鈴木に、私は思わずそう叫びたくなった。
「はい、これあげる。」
「・・・何よ、これ。」
「何って・・・ゴミ。」
・・・なんでったって、私は"こいつに好かれてる"とか言われなくちゃならないんだろう。
「いらないわよっ!」
そう言って、私はそのゴミを怒りにまかせて投げ捨てると。
「あ〜、菜月いけないんだ〜。」
・・・ガキかこいつは。
春樹も伊藤もどうかしてるわ。
授業が全て終わってから、私は春樹に声をかけた。
「春樹、いこ。」
「あ〜、ちょっと待って。」
春樹はごそごそと教科書をかばんに押し込み、立ち上がった。
今日は月に一度の委員会がある。
私と春樹は福祉委員な為、これから隣の教室で打合せをしなければいけない。
面倒だけど、月に一度、春樹と活動できるのは嬉しかった。
・・・はずなのに。
「なぁ、菜月〜。鈴木と付き合ってやれよ〜。」
「・・・なんでよ。」
私と春樹の間では、さっきからずっとこの会話が続いていた。
本当に鈴木の事を思って言ってるのか、ただ単にからかっているだけなのか。
多分後者なんだろうけど、春樹には私の気持ちなんてこれっぽっちもわかってない。
好きな人に他の人を薦められて、どこの誰が喜ぶっていうのよ。
「こらっ、春樹たち!ちゃんと話を聞きなさい!!」
そんな声とともに、前方からチョークが飛んできて・・・春樹の頭に激突した。
「いてっ、なにすんだよ、由香!」
「人の話を聞かないのがいけないの。」
チョークを投げた張本人、由香と呼ばれた少女はこの福祉委員の委員長で・・・春樹の幼馴染だった。
前でこの打合せを仕切っていた彼女が、喋っていた私たちを注意しなければならないのは当然だ。
だから、こんな風に私の機嫌が悪いのは、注意されたからじゃない。
普段からすごく仲の良い春樹と委員長がこうやって楽しそうに話しているのが嫌だったから。
「なぁなぁ、それより鈴木と・・・」
「やめてって言ってるでしょ!??」
バンッと机を叩いて立ち上がる。
春樹や委員長はもちろん、委員会のみんながびっくりして一斉に私の方を見る。
「私が、どんな気持ちでっっ・・・!!!」
その途端、目に涙がたまって視界がぼやけた。
たまらなくなって、私は教室を飛び出した。
みんなの視線が痛かったのもあるけど、それより、春樹に泣き顔を見られるのが嫌だった。
どうせもうすぐ委員会も終わりだったので、そのまま帰るつもりで昇降口に行き、靴を履き替えて走った。
そのまま、校門を通り抜けようとしたとき、「菜月!」声と共に、私の腕は誰かにつかまれていた。
「鈴木・・・。」
そこに立っていたのは、鈴木だった。
「どうしたの??」
急いで涙をぬぐい尋ねると、鈴木は黙り込んでしまった。
「何?私、早く帰りたいんだけど」
これは本心。今は誰とも話す気分にはなれないから。
「俺・・・」
ようやく口を開いたと思ったら尚も口ごもる鈴木に私はいらだちを感じながら、返答を待った・・・けど。
「俺、菜月のこと好きだ!!」
そう言われた途端、さっきまでのいらだちはどこかへ吹っ飛んでしまった。ついでに・・・涙も。
「・・・え??」
何が何だかわからない。
「だからっ、俺はずっと菜月のことが好きだったんだよ!!」
てことは・・・何?春樹の言ってたことは本当だったの??
でも・・・私は。
「ごめんね、鈴木。私は、春樹が好きだから。」
自然に、この言葉が出た。
「だから・・・・・・ごめんね。」
そう言って、校門を通り抜けようとした。その時。
「菜月!」
さっきの鈴木の声とは違うものが、私を呼び止めた。
振り返らなくてもわかる、その声は。
私の、大好きな人の。
そう理解した途端、私の顔は一気に熱くなった。
―聞かれた。
聞かれてしまった。
「菜月!!」
背中に、もう一度投げかけられたその人の声を聞きながら。
私は必死で駆けた。
菜月を追いかけて校舎から出てきた春樹は、校門のところでその姿を見つけて駆け寄った。
声をかけようとして。
「お・・・」
「私は、春樹が好きだから。」
静かな・・・でも、はっきりとした声。
「だから・・・・・・ごめんね。」
そう言って走り去ろうとした少女の名前を、思わず叫んだ。
「菜月!」
彼女はびくりとして、立ち止まった。
しかし、もう一度名を呼ぶと。
「菜月!!」
弾かれたように、駆け出してしまった。
春樹は追いかけようとしたけれど、「待って!」声を聞いて、思わず立ち止まった。
―由香だ。
「私も、春樹のこと好きだったんだけどな。」
「・・・・・・ごめん。」
「いいよ、わかってたから。行ってあげて」
悪い、と心の中で呟いて、春樹は菜月が行った後を追いかけていった。
後に残った2人は、しばらく春樹の去った方向を見つめて。
「いいのか?好きだったんだろ?春樹のこと」
「いいの。私は、好きな人には好きな人といてほしいわ」
「すごいな、お前。そんな風に思えるなんて・・・。」
がむしゃらに走った。
涙が溢れて止まらなかったけど、そんなのはどうでもよかった。
鈴木に悪い事をした。
春樹を追いかけて出てきた委員長にも。
・・・そして、春樹にも。
「菜月!!」
パシッと腕を掴まれる感覚。
私が振り払おうとする前に、私の身体は春樹の腕の中にすっぽりと納まっていた。
「春樹・・・どうして・・・」
「どうしてって言われても・・・なぁ。」
「委員長が・・・好きだったんじゃないの・・・??」
「は?委員長って・・・由香??なんでだよ」
「だって、あんなに仲が良かったし・・・」
「由香なら振ってきたから」
「はぁ!?」
そんなさらっと言うことなの??
私がそう思ったのがわかったのか、
「大丈夫。あいつ立ち直りすっげぇ早いし。それに・・・」
春樹はつなげた。
「俺は、菜月が好きだから。」
それを聞いた途端、涙が更にあふれ出てきた。
でも、それを春樹に知られるのはなんだか癪で。
「・・・パクったな。」
「嬉しいくせに。」
そう言って、2人顔を見合わせて笑った。
***後日談
「おはよー、菜月、春樹。」
「あー、おはよう鈴木・・・って、えぇぇ!??」
私は思わず驚いて大声をあげてしまった。
「鈴木に・・・委員長・・・!??」
そこには、手をつないで歩く2人の姿があったから。
えへへ、と頬を赤らめる委員長。
信じられないという気持ちで私は春樹の方を見ると、
「な?由香は立ち直りが早いって言っただろ」
「た、確かに・・・。鈴木も相当なもんだけど。」
++あとがき++
学園恋愛もの、ということで…こんな感じになりました。遅くなってすみません;
春樹君、鈴木君、出番少ないけど伊藤君にはちゃんとモデルがいます。
春樹君は結構珍しい名前なのでいじりましたが、鈴木君と伊藤君は名前ごといただきましたv(もちろん無断で。)
由香さんは最初出る予定じゃなかったんですが…ねぇ。
振られっぱなしじゃかわいそうなのでこんな後日談つけてみました(笑)
題名提供:AGEHAさま thanksです♪
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