森の中の岩
僕はハルク。
ある森の入り口に、木や丸太でできた、小さな小屋のような家に住んでいる。
双子の妹とのアリスと、木こりのマルク、マルクといつも一緒のレイアも一緒だ。
マルクとレイアは恋人じゃないっていうけど、僕にはそうは思えないな。
アリスとは仲が良くて、いつも一緒に遊んでいる。
歌を歌ったり、追いかけっこをしたり、魚釣りをしたり。
僕は魚釣りが大の得意で、いつもアリスに教えてあげるんだ。
遊びはいつも二人で決めるんだけど、でも、その日は、僕が先にどこに行きたいって言ったんだ。
なのに、アリスは、外に出たとたん、魚釣りをしようって言い出したんだ。
「アリスの嘘つき!」
「どうしてよ。なんでハルクが決めるの?私は魚釣りがいいわ。
やっとコツを掴んできたんだん。」
「でも、昨日、僕が言ったんだよ、森の中の大きな岩のところに行きたいって。
アリスだっていいって言ったじゃないか!」
僕は悲しいのと悔しいのとで、ムキになって怒った。
「意地悪!だって、岩に行ってどうするのよ?川原に行きましょう。」
僕はどうしてもアリスに見せたい物があった。
でも、見せるまでは秘密にしておきたかったし、今アリスを怒らすと、見せる事もできないと思った。
「……わかったよ。じゃあ、帰りにちょっと寄ってよ!それでいいだろ?」
自分から妥協した僕は、ちょっと偉いなと思った。だから、誇らしげに言った。
「うん!わかった。」
アリスも笑顔で頷いた。
よかった、僕は胸をなでおろすと、アリスと手を取り合って、川原へ駆けて行った。
僕も、釣りを思い切り楽しんだ。
風は気持ちいいし、空は快晴。水面がきらきら光っている。
「あ、来た来た!」
アリスの釣竿がぴしゃぴしゃ跳ねる。
「慌てちゃ駄目だよ。」
「うん!」
アリスは、目を輝かせながら慎重に釣竿を引いた。
「ん、重い。痛い!」
僕はさっと駆け寄って、加勢した。
「ん。これはでかいぞ!!」
僕らは興奮してきた。
あっちこっちに引っ張られるけど、二人で足を踏ん張って、思いっきり竿を引いた。
と、その瞬間、巨大な魚が宙を舞った。
「「でたぁあ!!」」
僕らの腕の長さくらいはある。
岸に打ち上げられると、ピシピシと激しく騒いだ。
「やったな!」
「やったね!」
僕らは手をパシンっと叩いた。
「ねぇ、これ早くマルクとレイアに見せようよ!!」
「あ。」
僕は戸惑った。
このまま帰ったら、アリスを岩に連れて行くことができない。
そう思ったら、僕はとんでもない行動をしてしまった。
「駄目、逃がすよ。」
ばっしゃぁん。
大きなしぶきを上げ、魚は水の中へともぐった。
うっすら黒い影が、ゆっくりとどこかへ向かっていく。
「ひどい、せっかく釣ったのに!マルクとレイアに、いいお土産ができたのに!」
「……だって、だって可愛そうじゃないか。それより、岩に行こうよ!」
「行かない、ハルクとなんか行かない!」
真っ赤になってそう叫ぶと、アリスは走り去った。
「アリス!」
なんだよ。僕が悪いのか!僕はただ、アリスに見せたかったんだ。
絶対にアリス喜ぶのに。絶対に……。
そう思いながら、僕はとぼとぼ、木の家に帰った。
「お帰り。あれ、アリスは?」
「ただいま、レイア。アリス、帰ってないの?」
「一緒じゃなかったの?」
僕は、事の次第をレイアに話した。
「そっか。でも、魚を逃がしてあげたのはいい事よ。命を粗末にする物じゃないわ。」
「ちがうよ、僕は怒って、魚を逃がしたんだ。魚の事なんて、ホントはどうでもよかった。
でも、アリスに腹が立ってたんだ。だって、僕が行こうって言ってたんだよ!」
「……ハルクの見せたかった物って、なんなの?」
夜になった。
フクロウや、よくわからない色々な声が聞こえてくる。
僕はベッドに寝っころがって、窓の外を見ていた。
満月が、ムカつく位輝いている。僕がこんなに沈んだ気持ちなのに。
部屋の外から、玄関の音がした。
アリスだ。
でも、僕は知らない。同じ部屋だけど、僕は寝てるふりをしてごまかすんだ。
そう思って、僕はふとんをかぶってじっと目を閉じた。
でも、しばらく経ってもアリスは入ってこない。
気になってしまって、ドアに耳を近づけた。
「……アリス、泣いてる?」
僕の胸は、急にずしっと重くなった。
僕のしたことが、そんなにアリスを傷つけたかと思うと、自分が情けなくなってきた。
次の瞬間、足音がこちらへ近づいてくるのが聞こえた。
やばい。
僕は、即座にふとんをかぶった。
「……ハルク、寝てるのか。」
マルクだ。
「ん〜。」
僕は、寝ぼけた声を出した。
「狸寝入りか。」
マルクは僕のベッドに腰掛けた。
「お前はすぐカッとしすぎる。アリスは、今日はレイアと寝るって言ってる。
別に俺はお前と寝てやる気はないけど、ま、元気出せ。」
マルクとレイアは別室。レイアが嫌がって、部屋を分けたらしい。
レイアがそう言っていた。
「……いじいじしてんなよ。少年。」
マルクは、ふとんの上から僕の頭を小突くと、すぐに出て行った。
僕は、もう1回月を眺めた。
明日、謝ろう……。
スズメの声で、僕は目を覚ました。
すぐに着替えると、僕はほんの少しだけドアを開けて、小屋の様子を覗いた。
「何やってんのよ。」
「レ、レイア!!」
びっくりした。
僕に気づいたレイアが、僕の目の高さで覗き返してきた。
「大丈夫よ、アリスの事なら。」
「そ、そんなんじゃないよ。おはようレイア。」
「おはよう。」
「おい、ハルク、うじうじしてるなって。ガキの頃はいっぱい喧嘩した方がいいんだ。」
マルクはテーブルに座って、たぶんモーニングコーヒーを飲んでいた。
僕はどう反応しようか迷って、とりあえず朝の挨拶をした。
「マルク、おはよう。」
「ん、おはよう。」
「全く、偉そうな事言っちゃって。今も十分あなたはガキよ。」
「なんだぁ。喧嘩売ってんのか?」
「まさかぁ。」
レイアはほほほと笑った。結構嫌味である。
「ガキって言うよりは、脳みそ筋肉よね。あ、それか薪が詰まってるのよね。」
「なんだとぉ。」
「そうやって、怒ってばっか。ちょっとは反論してみたら。」
「俺は女みたいに理屈くさくないんだよ。」
「そうよね、マルクは本能だもんね。」
またいつものが始まった、と僕はため息をついた。
僕がマグカップにコーヒーを用意していると、アリスがレイアの部屋から出てきた。
「あ、アリスおはよう。」
「おはよーさん。」
「レイア、マルク、おはよう。」
僕とアリスの目が合った。
言われる前に言ってしまえ。僕はゴクリと唾を呑んで。
「「おはよう!昨日はごめん!!」」
……へ?
僕の脳みそは、一瞬停止した。
「あ、いや、だから、ごめん。僕が悪かった。」
「何言ってるの。悪いのは私じゃない。ごめんなさい。知らなかったの。ハルクの気持ち。」
「え、じゃあ。」
僕はレイアを見た。
レイアは両手を合わせて、目でごめんと訴えていた。
「ねぇ、今日連れてってよ!」
「うん!!」
僕らは朝食を食べると、すぐに出かけた。
岩まで、歩いて10分くらい。
でも、僕らは楽しくて、歩いてる事なんて出来なかった。
小屋から岩まで、あっという間についてしまった。
僕が見せたかったもの、それは――
「かわいい、子ウサギね!」
「うん。もうちょっと前に見かけてたんだけど、ウサギって、赤ん坊の頃に人間が近寄ると、
お母さんが育てなくなっちゃうんだ。でも、もう大丈夫。」
「お母さんはいないの?」
僕は、得意げな顔をして、アリスから離れた。
お母さんウサギを抱いて戻ってくる。
お母さんは初めて見るアリスを警戒しているようだったが、アリスの指をちょっとかじると、すぐに慣れたようだ。
「よかった。喜んでもらえて。」
「ハルク、ありがとう。」
これからも、ずっと一緒だよ。
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運良く666番を踏んだらこーんな素敵な小説をいただいちゃいました!
リクエスト内容は『童話風』なのですが…か、かわいいです!ほのぼのです♪
どうもありがとうございましたっ。